夜のオフィスビルを、警備員ではなくロボットが巡回する。
防犯カメラ100台を人がずっと見続けるのではなく、AIが「いつもと違う場所」だけを知らせる。
異常を検知すると防災センターへ通知され、人間の警備員が必要な場所へ向かう。
こうした警備は、すでに日本国内で始まっています。
では、AIカメラや警備ロボットがさらに普及すれば、警備員という仕事そのものがなくなるのでしょうか。
2026年時点では、そう考えるのは少し早いでしょう。
先にAI・ロボットへ移りやすいのは「歩いて確認する」「画面を見続ける」「異常がないことを記録する」といった反復業務です。
一方で、不審者への対応、負傷者の救護、火災・災害時の判断、大勢の来場者への声掛け、交通誘導など、その場の状況を見て行動を変える仕事には人が残ります。
警備の未来を考えるなら、
「警備員かロボットか」ではなく、「AIが見つけ、ロボットが見回り、人が判断して対応する」
という分担で考えると分かりやすくなります。
結論|警備員はAI・ロボットでなくなる?
警備員がすべてロボットへ置き換わる可能性は、少なくとも近い将来は高くありません。
ただし、警備員一人あたりが担当できる範囲は大きく広がる可能性があります。
| 警備業務 | AI・ロボット化しやすい | 人に残りやすい |
|---|---|---|
| 館内巡回 | 決められたルートの自律巡回 | 異常発見後の現地対応 |
| 防犯カメラ監視 | 侵入・転倒・放置物などの候補抽出 | 映像確認・対応判断 |
| 設備確認 | 照明・扉・設置物などの変化検知 | 故障原因の確認・修理手配 |
| 巡回記録 | 日時・位置・映像の自動保存 | 報告内容の確認 |
| 受付・出入管理 | QR・IC・顔認証など | 例外的な入館対応 |
| 雑踏警備 | 人数・混雑状況の解析 | 声掛け・人流誘導 |
| 交通誘導 | センサー・信号制御の補助 | 複雑な道路状況への対応 |
| 緊急事態 | 異常検知・情報収集 | 救護・通報・避難誘導・判断 |
つまり、減りやすいのは「警備員」という職業そのものではなく、警備員が行っている反復確認の量です。
まず知っておきたい|警備ロボットは法律上の「警備員」ではない
AI・ロボット警備を考えるとき、少し整理しておきたい点があります。
警備業法でいう「警備員」は、警備業者の使用人その他の従業者で、警備業務に従事する人を指します。
つまり、警備ロボットそのものに「警備員」という法的身分が与えられているわけではありません。
ロボットはあくまで、
- 巡回する
- 映像を撮る
- 異常候補を検知する
- 遠隔監視へ情報を送る
ための機器です。
機械が高度になっても、警備業務の運用や対応責任まで自動的にロボットへ移るわけではないことは押さえておきたいポイントです。
警備業界はすでに「機械+人」で動いている
警備のAI化というと、最近突然始まったように見えます。
実際には、警備業界ではかなり以前から「機械が異常を検知し、人が確認する」という仕組みが使われています。
代表的なのが機械警備です。
住宅、店舗、オフィスなどへセンサーを設置し、
- 侵入
- 扉の開閉
- 火災
- 設備異常
などを遠隔で監視します。
異常信号があれば基地局で確認し、必要に応じて警備員が現場へ向かいます。
2025年末の機械警備は352万施設を超えている
警察庁の「令和7年における警備業の概況」によると、2025年末の機械警備業務の対象施設数は352万5,422か所でした。
そのうち住宅は195万261か所です。
| 項目 | 2025年末 |
|---|---|
| 機械警備業者 | 512社 |
| 機械警備対象施設 | 3,525,422か所 |
| うち住宅 | 1,950,261か所 |
| 専従警備員 | 27,145人 |
| 専従警備員1人あたり対象施設 | 130施設 |
すでに機械警備では、一人の警備員が一施設だけを見る仕組みではありません。
機械が多数の施設を常時監視し、必要なときだけ人が動く。
AIカメラや巡回ロボットは、この仕組みをさらに細かく、高度にしていると考えると理解しやすくなります。
警備員は約59.7万人|65歳以上が約3人に1人
警察庁によると、2025年末の警備員数は59万6,985人でした。
前年より9,137人増えており、「警備員そのものが急減している」という状況ではありません。
一方で、年齢構成を見ると特徴があります。
| 年齢 | 構成比 |
|---|---|
| 30歳未満 | 10.9% |
| 30~39歳 | 8.9% |
| 40~49歳 | 13.1% |
| 50~59歳 | 19.8% |
| 60~64歳 | 12.6% |
| 65~69歳 | 13.1% |
| 70歳以上 | 21.6% |
65歳以上を合わせると34.7%です。
ここで「高齢者だから警備ができない」と考える必要はありません。
むしろ問題は、夜間に広い建物を何周もする、真夏や真冬に長時間立つ、といった身体負担です。
ロボットに向いている仕事を機械へ移せれば、
人を減らすだけではなく、今働いている警備員の身体的負担を減らす
ことにもつながります。
警備会社の9割は「警備員100人未満」
もう一つ注目したい数字があります。
2025年末の警備業者1万949社のうち、警備員100人未満の会社は9,885社。全体の90.3%を占めます。
AI警備というと大手警備会社だけの話に見えますが、実際の警備業界は中小規模の事業者が圧倒的に多い産業です。
そのため今後は、大規模な自社AIシステムを開発する会社だけではなく、
- AIカメラ
- クラウド監視
- 巡回ロボットのレンタル・サービス
- デジタル報告書
などを組み合わせ、小規模な警備会社でも少人数で現場を管理する流れが広がる可能性があります。
1.AIカメラで「全部の画面を見る」警備が変わる
大型施設では数十台、数百台の防犯カメラを設置していることがあります。
しかし、人間が100画面すべてへ同じ集中力を向け続けるのは現実的ではありません。
そこでAIが、映像の中から設定された異常候補を探します。
例えばシステムによっては、
- 立入禁止区域への侵入
- 人の転倒
- 長時間の滞留
- 放置物
- 混雑
などを検知できます。
ここで大切なのは、AIが犯罪を判断するわけではないということです。
「この映像は人が確認した方がよさそうだ」と知らせるところがAIの役割です。
AIから通知を受けたあと、人が映像を確認し、本当に対応が必要か判断します。
AIカメラなら24時間見逃さない?
AIだから万能というわけではありません。
例えば、
- カメラの死角
- 暗所
- 逆光
- 人や物による遮蔽
- 雨・霧など屋外条件
によって映像の状態は変わります。
また、床に座っている人を転倒者と判定したり、短時間置いた荷物を放置物として通知したりする可能性もあります。
AI警備で重要になるのは、検知率だけではありません。
「何をAIへ見せ、何を人が確認するか」という運用設計です。
2.巡回警備はロボット化と相性がよい
警備ロボットが得意なのは、同じ場所を繰り返し確認する仕事です。
例えば夜間のオフィスなら、
- 廊下
- エントランス
- 共用部
- 重要設備周辺
を決められた時間に巡回します。
人が毎回歩いているなら、自律移動ロボットへ任せやすい業務です。
セコム「cocobo」は公道走行にも対応
セコムのセキュリティロボット「cocobo」は、巡回ルートを自律走行し、カメラ映像をAIで解析して、残留者・転倒者・放置物などを検知します。
2025年には「遠隔操作型小型車」の適合審査に合格。
必要な届出等を行ったうえで、公道や道路交通法上の道路に該当する公開空地などを巡回できる範囲も広がりました。
つまり、警備ロボットの活動範囲は建物内部だけではなくなり始めています。
3.2026年、警備ロボットは「見る」から「前回との違いを探す」へ
2026年9月には、SEQSENSEの自律移動型警備ロボット「SQ-2」に新しい「変化検知機能」が追加されました。
これは、巡回地点の基準状態と現在の状態をAIで比較し、変化を検知する仕組みです。
例えば、
- 昨日はなかった荷物が置かれている
- 照明が点灯していない
- 設置物の位置が変わっている
といった違いを検知し、監視用システムへ記録・通知できます。
ここは警備ロボットの進化を考えるうえで重要です。
単にカメラを載せたロボットが館内を移動するだけではありません。
「いつもの状態」を覚えて、昨日までとの違いを探す巡回へ進み始めています。
4.警備ロボットはすでに官公庁・病院・商業施設へ入っている
警備ロボットは、研究施設の実験機だけではありません。
「SQ-2」は2025年に大阪医科薬科大学病院で病院施設として全国初となる本格運用が始まりました。
2026年には、
- 渋谷PARCO
- デュオこうべ
- 経済産業省 総合庁舎別館
などでも実証・本格稼働が行われています。
つまり現在は、
「警備ロボットは使えるのか」を調べる段階から、「どの業務ならロボットへ渡せるのか」を詰める段階
へ入りつつあります。
5.ロボットがエレベーターに乗れると警備の考え方が変わる
警備ロボットの能力は、本体だけでは決まりません。
例えば1階しか移動できないロボットでは、10階建てオフィスの巡回には使いにくいでしょう。
そこで重要になるのが建物設備との連携です。
現在の警備ロボットには、エレベーターと連携してフロア間を移動できるものもあります。
今後は、
- エレベーター
- 自動ドア
- 電気錠
- 入退室管理
- 防災設備
との連携が進めば、一台で確認できる範囲がさらに広がります。
警備ロボットの普及には「賢いロボット」だけでなく「ロボットが動きやすい建物」も必要です。
6.夜間警備はロボットと相性がよい
夜間は来館者が少なく、決まった場所を繰り返し確認する施設が多くあります。
こうした環境では、自律巡回ロボットを導入しやすくなります。
例えば、
ロボットが館内を巡回する。
AIカメラが出入口を監視する。
異常候補が出たら防災センターへ通知する。
警備員は必要な場所だけ現地確認する。
という運用です。
人が1時間ごとに建物全体を歩く場合と比べ、移動の負担を減らせます。
7.「ロボット1台=警備員1人削減」ではない
警備ロボットの導入効果を考えるとき、「1台導入したので警備員を1人減らせる」と単純計算しない方がよいでしょう。
ロボットにも、
- 充電
- 通信
- 保守
- 巡回ルート設定
- 故障対応
- アラート確認
が必要です。
さらに異常を見つけたロボット自身が、すべての問題を解決できるわけではありません。
人手不足への効果が大きくなるのは、
警備員1人が複数のAIカメラ・センサー・ロボットを管理できるようになったとき
です。
AI警備で変わるのは「1人が見られる範囲」
例えば従来、3人の警備員が別々のフロアを巡回していたとします。
将来は、
- ロボットAが1階を巡回
- ロボットBが2~3階を巡回
- AIカメラが出入口を監視
- 警備員が中央監視室から全体を確認
といった形が考えられます。
異常がなければロボットが巡回を続け、何かあったときだけ人が向かいます。
これは、
「3人をロボット3台へ置き換える」
という発想ではありません。
「人が直接見に行かなければ分からなかった場所を、機械で常時確認できるようにする」
という変化です。
8.雑踏警備はAIだけでは難しい
AIカメラを使えば、人の数や混雑状況を分析できます。
駅、スタジアム、大規模イベントなどで、
- 特定場所へ人が集中している
- 通路の流れが悪くなっている
- 予定以上に人が集まっている
といった情報を現場へ知らせる使い方は可能です。
しかし、雑踏警備ではデータを見るだけでは足りません。
花火大会で急に雨が降る。
駅で電車が止まる。
子どもが迷子になる。
高齢者が体調を崩す。
こうした状況で警備員は、その場にいる人へ声をかけ、移動ルートを変更し、安全な方向へ誘導します。
AIは「どこが混んでいるか」を見つけやすい。一方、「その人たちをどう安全に動かすか」は人に残りやすい。
この違いがあります。
9.交通誘導警備はどこまで自動化できる?
工事現場の片側交互通行などでは、自動信号機やセンサーを利用できるケースがあります。
しかし、実際の道路は毎回同じではありません。
- 歩行者
- 自転車
- 店舗から出てくる車
- 工事車両
- 緊急車両
- 路上駐車
などが同時に動きます。
特に狭い道路や複雑な交差点では、現場を見ながら臨機応変に動く必要があります。
交通誘導も、単純な区間から機械化は進んでも、すべての現場がすぐ無人になるとは考えにくいでしょう。
10.受付・出入管理はかなり自動化しやすい
施設の出入管理では、すでに人が確認する場面が減っています。
- ICカード
- スマートフォン
- QRコード
- 事前来訪登録
- 顔認証
などを使えば、通常の来訪者は自動受付できます。
警備員は、
- 登録が確認できない
- 特別な事情がある
- 機器の利用が難しい
- 不審な行動がある
場合などへ対応します。
ここでも、通常処理を機械へ、例外処理を人へという分担が進みます。
11.巡回記録は「異常なし」からデータ蓄積へ変わる
人間の巡回では、一通り見回って何もなければ「異常なし」と記録することがあります。
ロボットなら、
- 何時に通ったか
- どこを撮影したか
- どこで停止したか
- 何を検知したか
- 前回から何が変わったか
を自動的に残せます。
データが蓄積すれば、
「この場所では最近、放置物の検知が増えている」
「この設備付近だけ照明異常が繰り返されている」
など、単発の警備では分からなかった傾向を見ることもできます。
警備は「異常を探す」から「いつもと違う状態を探す」へ
AIカメラや変化検知を利用すると、警備の考え方も少し変わります。
以前は警備員が「何か怪しいものがないか」と自分の目で探していました。
AIを使えば、
普段の状態を記録しておき、そこから外れた場所を優先して確認する
ことができます。
例えば、
- 普段は誰もいない時間帯に人がいる
- 昨日までなかった物が置かれている
- 通常閉まっている扉周辺に変化がある
といった状況です。
ただし、AIが「異常」と判定したことと、「犯罪」が起きていることは別です。
最後は人が状況を確認します。
AIカメラと顔認証カメラは同じではない
「AIカメラ」という言葉だけでは、何を分析しているのか分かりません。
例えば、
- 人数を数える
- 転倒を検知する
- 放置物を探す
- 人物を追跡する
- 顔を識別する
では、処理する情報の性質が違います。
特に顔識別機能を使う場合は、単なる混雑検知などより個人情報への配慮が重要になります。
AI警備ではプライバシー・個人情報にも注意
防犯カメラ映像で特定の人物を識別できる場合、その映像は個人情報に該当し得ます。
顔識別機能付きカメラを使う場合には、
- 何の目的で利用するのか
- 顔識別機能を使っていること
- データをどこまで保存するのか
- 誰が閲覧できるのか
- 外部サービスへ送信するのか
などを適切に整理する必要があります。
「防犯のためだから、撮影データを何に使ってもよい」ということではありません。
AI警備にはサイバーセキュリティも必要
カメラ、センサー、ロボットがネットワークにつながるほど、物理的な警備だけでは足りなくなります。
例えば、
- カメラへの不正アクセス
- アカウントの乗っ取り
- 映像データの流出
- ロボットとの通信障害
- システム停止
も想定する必要があります。
警備DXでは、建物を守るために導入した機器そのものが新しいリスクにならないよう、IT側の安全管理も重要です。
AI・ロボットでもなくなりにくい警備の仕事
| 仕事 | 人に残りやすい理由 |
|---|---|
| 不審者対応 | 相手の反応を見ながら判断する必要がある |
| 負傷者の救護 | 現場で身体的な支援が必要 |
| 火災・災害対応 | 状況が毎回異なる |
| 雑踏誘導 | 人への声掛けと臨機応変な誘導が必要 |
| 複雑な交通誘導 | 歩行者・車両など複数要因を判断する |
| 身辺警護 | 瞬時の判断と身体的対応が必要 |
| 来訪者対応 | 説明・案内・例外処理がある |
| AI異常判定の確認 | 誤検知か本当の異常かを判断する |
警備ロボットが向いている施設
特に導入効果を出しやすいのは、広く、巡回ルートが比較的決まっている施設です。
- 大型オフィスビル
- 商業施設
- 病院
- 駅
- 空港
- 物流倉庫
- 工場
- データセンター
- 官公庁施設
こうした場所では、一晩に何度も同じ通路を確認する仕事があります。
反対に、毎回状況が大きく変わる現場ではロボットのメリットが小さくなる場合があります。
警備ロボットを入れれば人件費は必ず安くなる?
必ずしもそうではありません。
警備ロボットにも、
- 利用料・導入費
- 施設マッピング
- 通信
- 充電設備
- 保守
- システム利用
- 遠隔監視
などのコストがあります。
例えば、小さな店舗を警備員が短時間だけ確認している場合、高性能な巡回ロボットを導入する方が高くつく可能性があります。
一方、大型施設を夜間に何度も巡回しているなら、移動時間や確認時間を減らせるメリットが大きくなります。
AI警備の費用対効果は「何人減らしたか」だけで見ない
| KPI | 確認したいこと |
|---|---|
| 巡回時間 | 人が歩く時間を減らせたか |
| 巡回範囲 | 同じ人数で確認範囲が広がったか |
| 異常発見時間 | 問題へ早く気づけるようになったか |
| 現場到着時間 | 通知後すぐ対応できたか |
| 誤検知率 | 不要な通知が多すぎないか |
| 巡回漏れ | 警備品質が安定したか |
| 警備員の移動量 | 身体負担が減ったか |
| 事故・トラブル | 安全性が維持・向上したか |
特に警備では、コストを下げても安全性が落ちれば意味がありません。
「少ない人数で、以前と同じかそれ以上の警備品質を維持できたか」
を見る必要があります。
警備員の仕事はどう変わる?
今後、一部の施設警備では「歩いて見回る時間」は減っていくでしょう。
その代わり増えるのが、機械から届いた情報を確認する仕事です。
| これまで | AI・ロボット活用後 |
|---|---|
| 館内を歩いて巡回 | ロボット巡回結果を確認 |
| 複数画面を常時目視 | AIが抽出した映像を確認 |
| 紙で巡回記録 | 自動記録を確認・補足 |
| 異常を自力で探す | アラートから優先順位を判断 |
| 施設内だけを見る | カメラ・センサー・ロボットを統合管理 |
「異常を探す人」から「機械が見つけた異常が本物か判断し、対応する人」へ。
施設警備では、この変化が起こりやすいでしょう。
AI時代の警備員に価値が残りやすい5つの能力
1.現場判断
AIのアラートを見て、本当に対応が必要なのか判断する力です。
2.緊急対応
火災、地震、負傷者、不審者など、決められたパターンだけでは対応できない場面があります。
3.コミュニケーション
来訪者への案内、注意、雑踏誘導など、人に伝えて動いてもらう仕事です。
4.施設知識
避難経路、設備、立入禁止区域などを理解している人ほど、AIの情報を正しく使えます。
5.AI・ロボットを扱う力
警備技術を理解することに加え、カメラ・センサー・ロボットの状態を確認できることも重要になります。
新人警備員でもAIがあればベテランと同じになる?
AIは、新人の確認漏れを減らす助けにはなります。
例えば異常発生時に、
- 場所
- 映像
- 過去の対応履歴
- 確認すべき項目
を表示できれば、何から確認するべきか分かりやすくなります。
一方、現場では、
「今すぐ声をかけるべきか」
「救急要請が必要か」
「人をどちらへ誘導すべきか」
といった判断があります。
AIはベテランの知識を共有する道具にはなっても、現場経験そのものが一瞬で不要になるわけではありません。
将来は「警備員1人+複数ロボット」が増える?
大型施設では十分考えられます。
例えば夜間なら、
- ロボットA:1階を巡回
- ロボットB:上層階を巡回
- AIカメラ:出入口を常時監視
- センサー:扉・設備を監視
- 警備員:防災センターから全体を管理
という形です。
異常がなければ機械が監視を続けます。
異常が出た場所だけ、警備員が現場へ向かいます。
この形なら、ロボットへ危険な不審者対応まで任せなくても、人間の移動量をかなり減らせます。
施設がAI・ロボット警備を導入するときの順番
「最新だから警備ロボットを入れる」では、費用対効果を出せないことがあります。
まず今の警備業務を分けます。
- 監視
- 巡回
- 記録
- 判断
- 現場対応
そのうえで、毎日同じように行っている仕事から自動化候補を探します。
例えば
毎晩2時間、同じ館内ルートを歩いている。
→ 巡回ロボットを検討しやすい。
100画面を常時監視している。
→ AI異常検知を検討しやすい。
来館者から複雑な相談を多数受ける。
→ 人を残した方がよい。
このように、技術から考えるのではなく仕事から考えるのが導入のポイントです。
AI警備でよくある勘違い
AIカメラなら犯罪者を自動で見つけられる?
そう単純ではありません。AIが検知するのは、設定された侵入・滞留・転倒・放置物などの候補です。犯罪かどうかは別の判断です。
警備ロボットがいれば警備員はいらない?
巡回や監視を補助できますが、不審者対応、救護、来訪者案内、緊急時の判断など人が必要な仕事が残ります。
警備ロボットは24時間休まず動ける?
機械にも充電、通信、保守が必要です。ロボットによっては自動で充電ステーションへ戻りますが、無制限に連続稼働できるわけではありません。
AIカメラなら人より必ず正確?
誤検知や見逃しの可能性があります。AIと人のどちらか一方へ完全に任せるより、組み合わせた方が現実的です。
ロボットを入れれば必ず警備費用が安くなる?
施設規模と警備内容によります。小さな施設ではロボット導入費の方が高くなる場合があります。
FAQ|警備員とAI・ロボットについて
Q1.警備員はAI・ロボットでなくなりますか?
すべてなくなる可能性は低いでしょう。巡回、カメラ監視、記録などは自動化しやすい一方、不審者対応、救護、雑踏誘導、交通誘導、緊急判断などは人に残りやすい仕事です。
Q2.警備ロボットはすでに日本で使われていますか?
はい。商業施設、駅、病院、官公庁施設などで本格運用や実証が行われています。2026年には経済産業省総合庁舎別館でも「SQ-2」の本格稼働が始まっています。
Q3.AIカメラは何を見つけられますか?
製品や設定によりますが、侵入、転倒、滞留、放置物、混雑などを異常候補として検知できるシステムがあります。
Q4.警備ロボットは公道を走れますか?
条件を満たした機体では可能です。セコムの「cocobo」は2025年に遠隔操作型小型車の適合審査に合格しました。実際の道路走行では必要な届出や運用条件を確認する必要があります。
Q5.警備ロボットはエレベーターに乗れますか?
対応する機種と建物設備を連携させれば可能です。「SQ-2」など、エレベーターと連携してフロア間を移動できる警備ロボットもあります。
Q6.AIカメラと顔認証カメラは同じですか?
同じではありません。AIカメラには人数計測、転倒検知、放置物検知などさまざまな用途があります。顔識別を行う場合は個人情報の取り扱いにも特に注意が必要です。
Q7.警備員の人手不足はロボットで解決できますか?
ロボットだけですべて解決するのは難しいでしょう。ただし、一人の警備員が複数のカメラ・センサー・ロボットを管理できれば、同じ人数でより広い範囲を警備できる可能性があります。
Q8.これから警備員を目指しても仕事はありますか?
警備需要そのものがすぐなくなるとは考えにくいでしょう。一方、定型巡回だけを行う仕事は機械化の影響を受ける可能性があります。緊急対応、施設知識、コミュニケーション、AI・ロボットの運用などを身につけると役割を広げやすくなります。
要点まとめ
- 警備員すべてがAI・ロボットへ置き換わる可能性は低い
- 先に自動化しやすいのは巡回・監視・記録などの反復業務
- 2025年末の警備員数は59万6,985人
- 65歳以上の警備員は34.7%を占める
- 機械警備はすでに352万5,422施設を対象としている
- 機械警備では専従警備員1人あたり130施設を管理する構造になっている
- 警備員100人未満の警備会社が全体の90.3%を占める
- AIカメラは大量映像から人が確認するべき場面を絞る用途と相性がよい
- 警備ロボットは官公庁・病院・商業施設などですでに運用されている
- 2026年には基準状態との違いをAIで探す「変化検知」も実用化された
- 雑踏警備・交通誘導・救護・緊急時の判断は人に残りやすい
- AI警備では個人情報とサイバーセキュリティにも注意が必要
- 重要なのは人員削減より「一人が安全に見られる範囲を広げること」
まとめ|警備は「人が全部見る」から「機械が見つけ、人が動く」へ
AI・ロボットによって警備の仕事は確実に変わり始めています。
ただし、その変化は「警備員が突然いなくなる」というものではありません。
防犯カメラをAIが見る。
ロボットが館内を巡回する。
昨日と違う場所をAIが探す。
扉や設備はセンサーが監視する。
そして何かあったとき、人間の警備員へ知らせる。
この組み合わせです。
実はこの考え方自体は新しくありません。
日本ではすでに352万か所を超える施設で機械警備が利用されています。
AIカメラや巡回ロボットは、その仕組みをさらに高度にしている技術です。
警備員が一晩中歩いて「異常なし」を確認する代わりに、ロボットが巡回する。
100台のカメラを人が見続ける代わりに、AIが怪しい場面を絞る。
人は、機械が苦手な仕事へ集中する。
- 不審者に声をかける
- 負傷者を助ける
- 火災時に避難誘導する
- 混雑した人の流れを変える
- AIのアラートが本当の異常か判断する
警備の目的は、警備員の人数をできるだけ少なくすることではありません。
異常を早く見つけ、必要なときに人がすぐ対応できる状態を作ることです。
その意味では、AI時代に価値が高くなる警備員もはっきりしています。
長時間歩ける人だけではありません。
施設を理解している。
AIの通知を判断できる。
緊急時に落ち着いて行動できる。
来場者へ適切に声をかけられる。
そして複数のカメラ・センサー・ロボットを使いながら、建物全体の安全を考えられる。
「自分の目だけで守る警備員」から「人と機械の目をまとめて使う警備員」へ。
これが、警備業で起こり始めている本当の変化なのではないでしょうか。
施設でAI・ロボット警備を検討するときのチェックリスト
- 現在、人が毎日繰り返している巡回はどこか
- AIカメラで何を検知するのか明確か
- 誤検知が出た場合は誰が確認するか
- ロボットが異常を見つけた後の対応者がいるか
- 充電・通信障害・故障時の運用を決めているか
- エレベーターや自動ドアとの連携が必要か
- カメラ映像・顔データの利用目的と保存方法は明確か
- ネットワーク機器のセキュリティ対策を確認したか
- 人件費だけでなく異常発見時間・巡回漏れ・安全性を比較しているか
- ロボット導入後も人へ残す仕事を決めているか
主な参考情報
- 警察庁「令和7年における警備業の概況」
- e-Gov法令検索「警備業法」
- 個人情報保護委員会「カメラに関するQ&A」
- 個人情報保護委員会「犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について」
- セコム「セキュリティロボット cocobo」
- SEQSENSE「自律移動型警備ロボット SQ-2」
- アイリスオーヤマ「SQ-2 変化検知機能」




